カルシウム・パラドックス

アフリカ南部に広く分布するバンツー族の女性は、一日1000mg以上必要なカルシウムについて約350mgしかとっていないにもかかわらず、骨が非常に強靭と言われています。彼女たちは6人から9人の子供を産み、母乳を長期間しっかり与えます。それでも彼女たちは骨折することも無く、歯周病で歯を失うことは極めて希なのです。

Enielle the Eskimo一方、動物性タンパク質を大量にとっているエスキモー(イヌイット)は、ひどい骨粗しょう症に罹っている人が多いのですが、彼らは世界の諸民族の中でもっともカルシウム摂取量の多い民族といわれています。主に魚の骨から一日に2000㎎以上のカルシウムを摂取しているにもかかわらず、世界一骨粗鬆症の多い民族なのです。

多くの人は、タンパク質、特に動物性タンパク質をたくさん食べると筋肉や骨が強くなると思い込んでいます。しかし事実は必ずしもそうではなく、動物性タンパクの過剰摂取によって含硫アミノ酸が代謝性アシドーシスを誘発し、身体が酸性になってしまうのです。その結果、それを中和する為にカルシウムが骨や歯から抜き出され、骨吸収が進んでスカスカな骨に。このように、蛋白質が多いほど体は酸性化してしまうのです。我々の肉体は弱アルカリを保たなければなりません。酸性化した肉体を弱アルカリに戻すための「ミネラル」が体内に無い場合、身体が強制的に骨からカルシウムを抜き取って元の状態に戻そうとするのです。

このようにカルシウムの摂取量が多いにもかかわらず骨疾患が多い現象はカルシウム・パラドックスと呼ばれています。骨の材料となっているカルシウムを沢山摂取しているのに骨折や骨粗鬆症が非常に多いという、逆説的なことが起こっていることからこのように呼ばれています。

では我々はどのような食生活をすれば良いのでしょうか。

中国人においても西洋人の半分しかカルシウムを摂取していないにもかかわらず骨粗鬆症の発症は稀なのです。キーとなるのは、大部分の中国人は酪農製品を摂取していない、という部分。彼らはカルシウムのほとんどを野菜から摂取しているのです。先のバンツー族についても穀物が主です。果物・野菜にはカリウム等のミネラル類が豊富に含まれているため、たまに高タンパク食を一緒に摂ったとしても、これら野菜等のミネラル類が代謝性アシドーシスを平衡化すると考えられます。

余談ですが、リンゴ、ナシ、ブドウ、ナッツ類、葉菜、豆類等々にはホウ素がよく含まれており、このホウ素はエストロゲンの生成を2倍も増加させてくれる効果があるため、とくに高齢の女性にはそれらの摂取もおすすめします。これは閉経によるエストロゲンの減少が骨粗鬆症を加速させることが多いためです。

どんな食材からカルシウムやマグネシウムを摂るか、を考えることが重要なのです。単に多く摂ればよい、、ではないのが一筋縄にいかないところですね…

photo by: Ashtyn Renee

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